ブラックライト照射前

近年、産業用インクの中でニーズが高まりつつある「ステルスインク」。
そもそもステルスインクとは、肉眼では見えない不可視インクのことで、紀州技研工業では、ブラックライトで照射すると印字が青く光る「CN9蛍光」を、隠し印字専用のステルスインクとして発表しています。

ステルスインクの開発は、すでに10年以上も前から進んでおり、当社でも2004年にCN9蛍光の発売を開始しています。発売当初、ステルスインクを積極的に印字してきたのは、大手の食品・飲料メーカーなどが主でした。食の安心・安全の観点から、製造工程において、商品をある一定の塊「製造ロット単位」で管理することが求められるようになったからです。

ブラックライト照射

製造ロット単位で自社の商品を管理することにより、その商品の産地や原材料の詳細、加工、製造、流通などの過程を明確にし、食品トレーサビティーの取り組みを着実に推進してきました。
ただ最近では、食品だけでなく、化粧品やブランド物など、高級志向のアイテムにも活用の幅が広がっています。

その背景には、インターネットなど販売経路の多様化に伴って、模造品や非正規ルート品などが横行し、消費者の安心・安全と会社の信用、さらには商品の意匠までをも脅かす大きな課題が、社会問題として挙げられるようになったからです。
だからこそこれからの隠し印字には、製造や流通だけでなく、追跡や遡及まで、より精度の高いトレーサビリティーの実現が求められます。

ブラックライト照射

現在、紀州技研工業の隠し印字用ステルスインク「CN9蛍光」は、通常は印字が見えませんが、ブラックライトで照射すると印字が青く光るUV発光インクを使用しています。
金属や紙、木材やガラスのほか、アクリル、PET、PA、電子基盤、硬質塩ビ、セラミックスなど、幅広い対象物に印字することが可能です。

プリンターの対応機種は、小文字用インクジェットプリンターの「CCS3000スタンダードモデル」。
こちらは従来機に比べて、35%溶剤消費量をカット。ランニングコストの低減におすすめです。
またステンレスボディをもつ「CCS-Rエコノミーモデル」も、ステルスインクの対応機種。こちらは、ペットボトルや紙パックなど、水を用いる環境でも気にせずにご利用いただけます。

ステルスインクと対応機種のプリンターを使い、ビールなどのアルミ缶、飲料水のペットボトル、化粧品のラベル、牛乳の紙パックと、さまざまな材質の容器に印字し、ある一定の塊で、製造工程や検査詳細などを管理します。
これらを正確に把握することで、事故発生時の原因究明や回収、品質管理の向上、さらには作業の効率化や消費者に伝える各種情報の充実化を図っています。現在、全国各地の製造工場などで、それぞれの商品の安全・安心を支援しています。

ただステルスインクの発売から10年以上が経ち、ブラックライトの一般流通もあって、新たなトレーサビリティーの構築が期待されるようになりました。
今後、用途が高まるであろう高級品やブランド物、薬、サプリメントなどへの印字も考えると、新たなアプローチでステルスインクを開発することが急務であり、また企業としても重要なビジネスの一つとして、取り組みを開始しています。