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新機種ご紹介特集
小文字用連続式インクジェットプリンターKGK JET CCS3500
インクと周辺機器も自社で開発し包括的なマーキングソリューションを提供

KGK JET CCS3500
プリントドライヤーをヘッドに搭載可能
インク・溶剤補充ボトルはねじ込み式
紀州技研工業株式会社(以下紀州技研)は、1968年国内初の自動捺印機専業メーカーとして設立し、現在産業用インクジェットプリンターの国内トップシェア*を持つ。インクジェットプリンターを形成するプリントヘッド、インク、周辺機器を含めたシステムの開発と製造を自社で行える日本唯一の専業メーカーとして広く認知されている。
「KGK JET CCS3500」は、2021年2月に発売された小文字用連続式インクジェットプリンターである。インクの乾燥を速めるためのプリントドライヤーを印字ヘッドに搭載(特許出願中)し、近年要望の多い有機則非該当であるアルコールベースのインクでの速乾性を実現した。また、インク・溶剤補充ボトルはねじ込み式を採用し、作業者が溶剤に曝露するのを防止するなど、高い基本性能に加えて、環境と労働安全衛生法への配慮に着目した新製品である。
*ドロップオンデマンド(DOD)式プリンター部門国内シェア17年連続1位(2020年、中日社調べ)
印字需要増加と環境・安全対応への課題
飲食料の缶やペットボトルなどの商品には、基本的に賞味期限やロット番号などが印刷されている。近年、製品への情報印字は非常に重要な役割を果たしており、トレーサビリティ要求への対応なども含めて印字需要は多様化と増加の傾向にある。
このような製品は金属、ガラス、樹脂材料でできており、曲面への印字も多いことから、印字には速乾性のインクを使う必要があり、プリンターは連続式インクジェットプリンターが広く使われている。情報印字の要となっている速乾性インクと連続式インクジェットプリンターであるが、現状主流の速乾性インクには有機溶剤が含まれており、プリンターの動作やコンディション維持にも溶剤を必要とする。そのため、労働安全衛生法の有機溶剤中毒予防規則(有機則)を遵守する必要があり、環境負荷低減の観点からも有機則非該当溶剤の使用には対策が求められている。
有機則および環境負荷低減のための対策として、作業者がインク交換時などに溶剤に曝露する可能性がある環境への局所排気設備の設置、有機則対象溶剤の使用量削減、有機則非該当の溶剤を用いたインクの使用などが検討されている。しかしながら、局所排気設備は大掛かりで費用がかかり、有機溶剤使用量はその必要性から削減の限界がある。また、近年有機則非該当のインクの使用が検討されているが、有機溶剤を使用したインクより速乾性が劣るという課題が残っている。
紀州技研によると、有機則該当インクを使用する他社小文字用インクジェットプリンターシステムにおいて、アルコール(有機則非該当)ベースのインクに変更を試みたが印字の乾燥に関する問題を解決できず、相談を受けるケースが少なくないという。解決には、プリンターシステム、インクといった個々に対するアプローチだけでは難しく、相互関係を踏まえた包括的な開発と最適化を実現するノウハウと体制が必要とされている。
小文字用連続式インクジェットプリンター:KGK JET CCS3500

小文字用連続式インクジェットプリンターのヘッドの機構
連続式インクジェットプリンターは速乾性インクを使用するため、インクがノズルで固まらないように運転中はインクを連続して噴出する。印字が必要でない場合はガターチューブと呼ばれる回収口からインクを回収し、必要なときだけインクの軌道を変えて対象物に印字する仕組みを採用している。
KGK JET CCS3500には、この仕組みをベースに紀州技研特有の技術が投入されており、優れた性能とともに前述の課題への対応が考慮されている。

インク・溶剤による汚染や曝露を防止可能
ねじ込み式ボトルを採用により、インク・溶剤補給時に作業者の手や装置を汚すことなく、溶剤の臭気も大幅に低減可能で、作業者が溶剤に曝露することを防ぐ。
これは、労働安全衛生法対策として有効であり、局所排気設備の必要性を軽減、もしくは排除を検討できる。

ガターチューブが自動で後退しノズルをキャップする
KGK JET CCS3500は、紀州技研特有の技術である自動ノズルキャッピング機構を備えている。運転終了時、ヘッド内でインク回収口であるガターチューブ(前出機構図参照)が自動的に移動しノズルを密閉する。この機構が非稼働時のインクの固化を防ぎ、以下のメリットを提供する。
<自動ノズルキャッピング機構のメリット>
・ヘッド内のインクを溶剤に置換不要
・運転/停止の繰り返しでインクが溶剤で薄くならない
・運転の再開がスムーズ
・溶剤消費量を削減できる
ヘッドの掃除や運転再開時の手順が簡略できることはもちろん、溶剤の使用量を削減できることが大きなメリットになる。自動ノズルキャッピング機構については、解説動画が用意されているので併せて参照いただきたい(記事末尾の「関連情報」にリンクを記述)。

KGK JET CCS3500は、インクの乾燥時間を短縮するプリントドライヤーを印字ヘッドに搭載(特許出願中)可能である。画像にあるようにヘッド部にノズルとチューブがセットされ、印字直後にエアーを吹き付ける仕組みである。
これは、近年需要が増えはじめたアルコールベース(エタノール)のインクを使用した際にも速乾性を実現することを目的としている。アルコールは、労働安全衛生法の有機則非該当であることから、その対策として採用が進んでいる。しかしながら、従来の有機溶剤を使用したインクに比べ速乾性は劣ることから、プリンターにドライヤーを搭載可能にした。
試験結果を表に示す。ドライヤーの効果は十分に確認でき、エタノールを溶剤としたインクでは乾燥時間が70%短縮されている。有機則非該当インクの使用によっては、有機則対策のみならず溶剤使用量も大幅に削減可能となる。
溶剤成分 | ドライヤー乾燥エアなし | ドライヤー乾燥エアあり |
MEK(CN505) | 0.5秒以下 | 0.5秒以下 |
MIPK(CN335) | 1秒弱 | 0.5秒以下 |
エタノール(CN303) | 5秒 | 1.5秒 |
水(CP208) | 15秒 | 12秒 |
KGK JET CCS3500の基本仕様を示す。ラインアップは現状2機種で、CCS3500はハイエンドモデルの位置付け、そしてエコノミーモデルのCCS3300が用意されている。主な違いは、防塵防水性がCCS3500はIP65でCCS3300がIP54、フルカラータッチパネルのサイズが10.4インチに対して5.7インチ、印字段数が最大6段に対して5段になる点で、基本的に同じ仕様に基づく。詳細は仕様書などで確認いただきたい。

ハイエンドモデルCCS3500

エコノミーモデルCCS3300
先に挙げた安全・環境のポイントに加えて、どちらの機種も先駆的な専業メーカーならではのノウハウと市場ニーズに基づく優れた仕様を備えている。
<主な特長>
・ハイエンドモデルCCS3500とエコノミーモデルCCS3300のラインアップ
・最高3666文字/秒の高速印字に対応(ノズル種、インク種により異なる)
・IP65(CCS3500)/IP54(CCS3300)、CE、RoHS対応
・最大16台まで同時制御:スレーブ機能によりマルチヘッドに対応。親機1台で子機16台まで同時制御可能
・取り外し可能タッチパネル:フルカラー10.4インチ。画面を取り外して遠隔操作が可能(CCS3500のみ)
型式 | CCS3500/CCS3300 |
印字方式 | 連続式(帯電制御方式) |
最高印字速度[文字/秒]
(5×5ドットフォント、文字間1) |
2233~3666(ノズル種、インク種により異なる) |
文字種類 | アルファベット(大/小文字)、数字、記号、ひらがな、カタカナ、漢字(JIS第一、第二)、ユーザー文字 |
バーコード印字機能 | ITF、Code39、NW7、JAN、Code128 | 2次元コード印字機能 | QRコード・データマトリクス | 外部接続 | I/O、信号灯、RS-232C、LAN、エンコーダー、UPS、USBメモリー | 通信機能 | RS-232C 1CH最大115、200bps、Ethernet | マルチ制御 | 親機(マスター)1台に対し子機(スレーブ)最大16台制御可能 | 使用環境(温度、湿度) | 0~40℃(インク種により異なる)、10~85%(ただし結露無きこと) | 電源 | AC90~264V(47~63Hz)、80W |
プリンター、インク、システムの自社開発自社製造によるマーキングソリューション提供
紀州技研は歴史のある専業メーカーであり、優れた産業用インクジェットプリンターを自社で開発し製造しているが、インクやシステム構築のための周辺機器についても同様に自社で開発し製造を行っている。産業用インクジェットプリンターのメーカーは他にもあるが、インクやシステムを自社開発自社製造し、さらには販売と保守までを行うほぼ完全に近い一貫体制を敷いている国内メーカーは紀州技研だけである。
産業用インクジェットプリンターの印字対象物は段ボールから金属、プラスチック、セラミック、そして食品など多岐に渡り、それぞれ要求される品質や性能も様々である。したがって、プリンターに加えてインクの選定は重要である。それには、市場のニーズに対応しつつ独自性を持ったインクが必要となる。個々の顧客要求に対して最適なインクを迅速に提供するには、紀州技研は自社で開発し製造することが非常に重要で有効であるとしている。
同様に、印字システムを構築するのには様々な周辺機器や装備が必要となる。紀州技研では、印字検査装置やUV硬化インク用UV照射機も自社で開発し製造している。さらには、封函機、ウエイトチェッカー、搬送コンベヤ、システム一括制御PCなど、自社製ではないものを含めた総合的なシステム提案を行っており、それらの手配も可能としている。
紀州技研では、このような一貫体制による包括的なサポートを「マーキングソリューション」と呼んでいる。顧客は成し得たい印字を伝えることで、それに必要な一式の提案、つまりソリューションを手に入れることができる。これができることが、紀州技研の大きな強みになっている。
まとめ
紀州技研は、産業用インクジェットプリンター専業のトップメーカーである。プリンターに加えてインクおよびシステムの自社開発自社生産体制を持つ唯一の国内メーカーであり、販売、メンテナンスを含めた一貫体制により、顧客が実現したいシステム構築を可能にする包括的なマーキングソリューションを提供している。また、国内拠点は全国14か所に及び、迅速な対応を可能とする体制を整えている。
新製品である小文字用連続式インクジェットプリンターKGK JET CCS3500/CCS3300は、プリンターとしての優れた基本性能を備え、近年の環境・安全要求に対応すべく、ねじ込み式ボトル、ノズルキャッピング機構、プリントドライヤーを採用している。これらによって、労働安全衛生法の有機則対策や、溶剤使用量削減といった環境への配慮に寄与することが期待できる。
これらの点から近年、飲料の缶への印字用途などで引き合いが増えており、紀州技研では当面はこの市場に対して注力していく方針である。また、並行して半導体や電子部品への直接印字分野への対応も視野に入れている。
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